210人が本棚に入れています
本棚に追加
真二はピシャリと窓を閉めた。それと同時に浮いていたカーテンの力が抜けて窓に張り付いて、また離れた。
ここから見る景色。見慣れて、なんの感動も遺憾もないはずなのに……。やけに暗い。時間のせいだろうか……。まだ冬が残っている。
似たように暗くなっている部屋を照らすために、真二は蛍光灯をつけた。さっきの求人誌には光が反射し、ただ白くしか映らなかった。
真二はそれを拾いあげ、ベッドに腰掛ける。毎回毎回似たようなもので、さっきとページが変わっていることにも気付かなかった。
『何でも屋』
それは次のページをめくるために用いた左手の下にあった。小さな写真に写るその建物は古く、汚い。壁の色は暗く、陰っていて、今にも吸い込まれてしまいそうで。
何でも屋とは、本当に何でもするのかもしれない……魅力的でそう思えてならない。
手の影をどけても、その仕事はより陰鬱に映り続けた。。
最初のコメントを投稿しよう!