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遅れたのもあって二人は足早に職員室に向かった。いるかどうか不確かだったが、ドアを開けて安心した。
部屋には黒田しかおらず、白髪頭の後ろで手を組んで背をもたれていた。
明彦が話しかけると鼻をシュンと吸い込んで椅子を回した。
「寂しくなるなあ」
「そうですね」
「とりあえず二人とも卒業おめでとう。まぁお前らならこれからもうまくやってくだろう。なあ真二?」
「適当に頑張ります」
黒田は口元を浮かせて歯を見せた。
「そうか。お前にはそれがいいのかもな」
--プルルル プルルル
「誰だ~?こんな時に」
黒田はいかにもだるそうに腰を上げた。そして腰を右手でトントンと叩きながら受話器を持ち上げた。
真二たちは電話に受け答えする黒田の顔色に悪報を察しつつも、同時に好奇心にとらわれていた。
「はい、わかりました」
黒田は受話器を強めに抑えると、大きく一息ついた。
「真二、お母さんが病院に運ばれたそうだ」
「え!?」
身体中の血管が破裂するかのように心臓が拍躍した。
「今車出すから――…」
真二は、もう既に走り出していた。
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