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白い個室にベッドが一つ。
オレは愛しい君に花を届ける。
「今日は赤い花、いっぱい買ってきたで」
オレは花瓶に花を入れる。
「ありがとう。綺麗ね」
彼女はオレに微笑む。
弱々しくも健気に頑張る彼女。
オレが初めて出会った時の彼女も微笑んでいた。
今とは違い、凛とした笑顔だった。
初めて彼女に会ったのは一年前のよく晴れた日。
オレが大阪から引っ越してきたのが始まりだった。
たまたま彼女が出掛けるために外に出てきた時、オレが荷物を持って歩いていた。
「あっ、どうも。隣に引っ越してきた者です」
「こちらこそ」
彼女は凛と笑った。
多分、その時からオレは彼女に惚れていたんだと思う。
それから数日して、オレは学校に通うようになり、彼女はオレが下校すると毎日挨拶をしてくれた。
「おかえりなさい。今日はどうだったの?」
彼女は窓から顔を出して言った。
「特に変わったことはなかったで」
「でも、手に包帯が。大丈夫?」
彼女はオレの手を取った。
ドキドキする。
彼女の手から温もりが伝わってくる。
「喧嘩でもしたの?」
心配そうな目で彼女はオレを見ている。
「いや、これは剣道の時に…」
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