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すると彼女はホッとしたのか笑顔になった。
「授業でならよかった。でも、気をつけてね」
彼女の手が離れる。
名残惜しく感じながらも手を戻した。
「今日も宿題あるんでしょ?それじゃあ、またね」
「うん、また明日」
彼女はにっこり笑って窓を閉めてしまった。
オレに気を遣ってくれる彼女。
宿題なんてすぐ終わるし、もっと喋っていたいけど、そんなことは恥ずかしくて言えない。
お喋りな男だと思われたくないと言うこともあった。
だから、オレは諦めて家に帰った。
ただいまもそこそこに自分の部屋に籠る。
彼女に言われた通り、宿題をするためノートやらを広げる。
しかし、集中などできるはずはなく彼女に握られた左手を見ていた。
もうこの包帯外せないなとぼんやり思った。
すると彼女の笑顔が頭から離れなくなる不思議な現象に見舞われた。
これはもう病気である。
巷で噂の恋の病にかかってしまったようだ。
困ったものだ。
オレはまだ彼女のことを何も知らないのに。
知っているのは名前と優しいことと何故か学校に興味があることと凛とした笑顔だけだ。
十分と言えば十分かもしれない。
だけど、お見合いで結婚するのが当たり前のご時世。
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