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恋をしたなどと他人に相談もしにくい。
そして彼女と付き合えるとは思えない。
きっと有能な青年と彼女は結婚をするのだろう。
だから、オレは下校した時に少し話すだけでいいんだ。
それが幸せなんだ。
自分に言い聞かせ、宿題に取りかかった。
翌日、昨日と同じように彼女は窓から声をかけてきた。
「おかえりなさい。今日は怪我しなかった?」
「今日は大丈夫やで」
「よかった」
うふふと彼女は笑った。
オレも同じく笑った。
「あっ、そうだ。明日は学校休みなんでしょ?」
「うん。そうやけど」
「一緒に梅を見に行ってほしいの。お父さまが一人では駄目だって言うのよ」
まさかのデートの誘いだった。
もしかしたら彼女にしたら友達を遊びに誘う感覚かもしれないが、どちらにしろオレは嬉しかった。
「ええよ。でも、オレなんかでええんかなぁ」
「いいの。明日、お家を訪ねるから一緒に行きましょ」
彼女は嬉しそうな顔をして小指を出してきた。
オレも小指を出し、彼女の小指と絡める。
「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます。指切った!」
彼女は子どものように無邪気に詠った。
詠い終わるとすっと彼女の小指が離れる。
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