あなたの心、温めますか

彼女の日常

「朝比奈さんおはようっ」

「おはようございます」

接客をしながら元気に挨拶してきたのはこの店のオーナー。

もうすぐ６０歳となるが、咲希よりも小さな身体はまだまだ現役で働いている。

先輩がレジで咲希は袋詰めを担当する。

この袋詰め、簡単そうに見えるが慣れるまで中々難しい。

商品を入れる位置によって重心が取れていなくバランスが悪い場合がある。

これは経験と工夫により上達していくものだ。

経験をこなしている咲希が差し出す袋はバランスが安定している。

ただ、「ありがとうございました」と言う先輩の顔は笑顔だが咲希の顔に笑顔はない。