第1章

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彼女と徳永は駅を出て、すぐのところに止めてあったリムジンへと乗り込んだ。 「ほんと、準備がいいんだから。」 「いえ。私一人の事でしたらここまで至りませんでした。」 「わかった。お父様ね?」 「はい。そうでございます。社長からの手配です。」 「やっぱりね。それで、帰ってきたから早速顔が見たいってことかしら?」 「そのようにございます。今は会社に向かっております。」 「手間が省けて良かったかも。ありがとう。徳永。」 「いえ。社長も心配しておりました。二ヶ月も連絡がつかなかったもので。」 「携帯の電波も届かない田舎の観光へ行ってたからね。仕方ないわよ。」 「どの当たりか教えてもらってもよろしいでしょうか?」 「ぃやぁよ。プライベートで行ってたんだもの。内緒。」 「そのようにございますか。では、もう少しかかりますのでお待ちください。」 リムジンの中にある電話を取りなれた手つきで電話を掛け始めた。 「あ、もしもし?川崎さん?社長と代わってもらえますか?…あ、私。坂上ちずるです…はい、分かりました…あ、お父様。ただいま帰りました…ええ。ご心配お掛けしました。どこに行っていたかは、内緒。元気に帰ってきたんだから、大丈夫…そう。これからお客さんね。それじゃ、また後でね。」 坂上ちずるは、社長令嬢である。川崎は社長の秘書である。ちなみに女性。 「徳永。あとどれくらい?」 「20分程で着く予定でございます。音楽でもお掛けしますか?」 「うん、お願い。」 ちずるは音楽よりも、思考に耽っているようで、窓越しの空に目線が行き上の空のようだった。
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