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「ここからだと…5キロ先に展開している8班が一番近いな」GPSの画面には現在地点から近い部隊のマーカーを岩田に飛ばすと真田は胸ポケットに携帯をしまい入れ立て掛けていたアサルトライフルを持つ。
「5キロて遠くないか…」
「遠く感じんな散歩と考えれば楽しいぞ。まあお前ならダイエットも兼ねてるから一石二鳥になるな」
にやりと冗談ぽく笑い瓦礫を滑り下りた。
「痛いとこ突きやがって…」
伊東は腹の脂肪を摘み肩をすくませうなだれ真田のあとに続き瓦礫の上から滑り下りた。
先に下りた真田の前には医療担当の石井が悲壮な表情をして待っていた。
「あ、あの先輩…」
「駄目だったのか」
真田の問いに石井は言葉なくこくりと頷き下を向く。
真田は石井の背中の奥で屍に縋り付く川原に視線をやったが同情の気持ちも湧かず彼女の喪失感は理解しにくと思っていた。なりよりも彼女の普段からの素行を知っていたため真田は二股女でも泣くのかと嘲りにも似た気持ちがあったからだ。
視線を石井に戻し真田は指示をした。
「それじゃあ使えそうな物は取り外しといてくれ」
「えっ…いまなんて言ったんですか?」
気遣いの言葉とは違う現実味のある言葉に石井は顔を上げた。信じられない目をして瞳を潤ませる。
何か期待というか欲しい言葉があったようで真田はその目を直視せず視線を横に外して頭を掻いて困った仕草をした。
頭の中で空気読めないのかこの二年生はと思っていたのだ。
そこに伊東が瓦礫から下て来た。二人の会話のない理由は知らないため移動の話しと勘違いし明るく石井に愚痴を零した。
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