Prologue

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石井はというと男二人の顔は見えず言葉も聞こえず、処置がもっと上手くやれれば班長を死なせずに済んだのではないかと道徳心が迷走していた。血が乾燥しへばり付く感覚と死の臭いを握りこのさき助けれることは出来るのかと疑問の壁にぶちあたっていた。 そして真田からの現実味のある言葉が胸を締め付け壁を越える一歩を踏み出せずにいた。 瓦礫の前で三人の先輩達が微妙な空気の包まれように鈴は本当にこんな現場に欠員補充とは言え一年生の自分が推薦されてよかったのかと戸惑っていた。 なりよりも初陣で現場指揮者の戦死を目の当たりにする確率なんてそうそうあるもんじゃないと溜め息を漏らした。 ヘルメットは汗臭くてぶかぶかだし、人差し指だけが空いた手袋は慣れない。支給品の迷彩服の首元のタグはちくちくして痛痒い。 安全ブーツなんかアキレス腱が固定されてすぐに足首が怠くなる。 64式小銃なんて重くて銃身が嵩張り小柄な女子高生には扱い難い品物であった。 鈴は置かれた状況と支給品された装備品に出会うなら顧問の先生に断ればよかったんじゃないかと喪にふくしている川原に目をやった。
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