あのかの有名な独裁者がこんなに可愛い訳がない

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「ここは…どこだ?」 気が付いたら俺は、舗装すらされてない砂利道の上に寝転んでいた。 上体だけ起こして辺りを伺うが、自分の脳の中にはその場所の記憶はなかった。 「…ついに俺も二次元の世界にやってきたのか? こんなヨーロッパの辺境みたいなとこが見えるなんて。」 呆然としながらそう一人で呟いていると、後ろからエンジン音と、キュラキュラという音が同時に向かってくることに気付いた。 「どわぁっ!?」 その時の反応は本能的なものに違いない。 俺は転がりながら自分を潰しかけた鉄の塊を凝視した。 「さ、Ⅲ号戦車? なんだ?なんかのセレモニーか?」 俺はアニオタとミリオタを兼ね備えてる男だ。 だからポピュラーな戦車の類いならすぐに分かる。 そして、今言ったように、俺はこの時、このⅢ号戦車を本物だとは思っていない。 何故なら、この戦車は俺の生きていた時代から半世紀以上も前の代物だからだ。 「気をつけろ貴様!」 ハッチから身を出している戦車長が俺に対してそう言った。 勿論、日本語だった。 「あ、はい。すいません…。」 でもその戦車長の顔と目付き、それに体つきはまさにドイツ人と言った感じ。 目の色も、カラーコンタクトにしてはリアル過ぎる。 ここって、まさか本当に…。 「なぁんて、ないない。」 馬鹿らしくなって大笑いする。 ただのコアなコスプレイヤーに決まってる。 そう思っていると、俺は2人の歩兵に左右から腕を掴まれた。 「えっ?何?」 「お前のその風貌が怪しいと、上官が言っていてな、お前を連行する。」 俺の右腕を掴んでいる、少し細めの体格のドイツ兵がそう言った。 しかし、俺は自分が何故怪しいなんて言われるのか分からない。 俺は、上下制服を着ているだけなのだ。 「俺のどこが怪しいんだよ!」 「それは上官に聞いてくれ。」 今度は俺の左腕を掴んでいる、がっちりとした体格のドイツ兵が言った。 俺はそのままの態勢で連行された。 私もよくよく運のない男だな…。 なんて某赤い彗星の台詞を吐いてる場合じゃないな…。 夢なら早く覚めてくれ…
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