あのかの有名な独裁者がこんなに可愛い訳がない

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ポーランドを出発して2日と半日、俺はベルリンに到着した。 おぉ…、これが二次大戦中のベルリンか…。 結構いい感じ、近代的だ。 街並みを車の窓から見ていると、ある建物の前で止まった。 国会議事堂じゃねぇな。 「ここだ坂峰、総統閣下が待っているぞ。」 アヒム、それにラインホルトの2人が俺の前を歩いて先導する。 いよいよヒトラーとご対面か…。 少し緊張するぜ…。 装飾の入った扉の前で、俺は服装を整えたのを確認してから、ラインホルトが扉を開ける。 「総統閣下、坂峰紀信なる日本人を連れて参りました!」 アヒムとラインホルトはお馴染みの右手を挙げるポーズをとった後、俺だけを残して出ていった。 ヒトラーは椅子の向こうにいるらしく、姿が見えない。 ただ無言の時間が過ぎていった…。 俺は我慢しきれなくなり、口を開いた。 「あ、あの…。」 「あんた、未来から来たらしいわね。」 俺の言葉に対しての声は、毒ガスの後遺症で喉を痛めたヒトラーのあの声ではなかった。 そう、ちょうど俺くらいの年の女の子の声…。 「そ、そうだけど…」 その声を聞いた瞬間から、俺は敬語をやめていた。 椅子から、ヒトラー(と思われる人物)が立ち上がった。 髪は綺麗な金髪。目は透き通るような碧。 髪の長さ的には確かに長いが、長すぎる訳でもない。 ツインテールにしていて、リボンの部分には、あの有名なかぎ十字が描かれている。 目付きは鋭いが、整った顔立ちだ。 世間一般的に見ても美少女の部類に入る。 しかし…、俺の中では疑問が深まるばかりだった。 「あんた…誰?」 「誰に向かって口を聞いてるの?私は第三帝国総統、アドルフ・ヒトラーよ!」 その言葉を聞いた瞬間に、俺はとある夕方に鳴く蝉の名前のアニメのキャラの台詞を借りて、こう言い放った。 「……嘘だっ!」
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