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「さて、もう出し惜しみはいいだろ、お互いにな?」
要の纏う雷が一瞬で真っ黒に染まり、右目の陣に黒い蛇が絡み付く。
「出せよ、アンノウン。仙崎さんを沈めた姿をな」
「…………」
アンノウンは傷を塞ぎながら要を見据える。
何もかもを見透かすような要の言葉に若干恐怖を抱きながら、薄く笑う。
「気づいていたのですか?」
「勘だ。だが、仙崎さんを倒す力を持っているにもかかわらず表舞台にほとんど出てきてねぇ奴がいるじゃねぇか。
予想するのは簡単だぜ?」
「……フフフ」
傷を完治させると、アンノウンはナイフを投げ捨てる。
代わりに、その手に剣を構えた。
「剣……?」
アンノウンは裂けそうなほどに唇を開き、笑う。
それに共鳴するように、アンノウンが持つ剣が鳴動する。
まるで笑っているように。
「っ!」
アンノウンの周囲の地面が捲れ上がり、辺りを振動と共に隆起させる。
凄まじい紫の魔力が剣から放出され、辺り一帯を吹き飛ばそうとその力を爆発させる。
そんな中で、要は涼しげな顔で笑みを崩さない。
そして、待ち望んでいたかのように、呟いた。
「偽物でも会えて嬉しいぜ」
アンノウンの顔が変化し、平凡な男に変わる。
一切、目に光がないこと以外は。
「ネストオーブ……!」
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