第一章─静かな朝─

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十二月上旬の寒い朝、一つの影が神楽坂魔法学園の中庭で横になっていた。 空はまだ少し暗く、日は上っていない。 冬だから当然なのだが、それほどに早い時間だ。 影の正体である柴崎要は、敵である八桐和人から貰った情報を全てまとめあげる。 敵の本拠地の場所と、そこに入る方法。 この二つさえ知っていれば、後はどうとでもなる。 「……?」 ドアが開き、誰かが中庭へと出てきた。 普通に考えるとこの時間にはここには誰もいないはずだ。 しかし、要の耳はしっかりとその音を捉えた。 しかし警戒はしない。 それが誰の足音なのか、大方予想はついているのだろう。 「早朝出勤、お疲れさん」 「…………」 要は立ち上がろうともせず、その訪問者を見上げながら言った。 「行くのか?」 「……まぁな」 「……変わらないな。昔から。 相変わらず勝手だ」 「昔の話はいいだろ」 ふてくされたように顔を背けるが、その顔からは笑みが零れている。 「……とにかく、まぁ行ってくるから、ちょっと任せたぜ。今日中には戻るから」 見下ろす影を、要は冗談っぽく見つめた。 「あいつらを頼むな、茜」 二人きりの家族の会話はそこで途切れ、中庭には再び沈黙が訪れた。
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