第一章─静かな朝─

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「シンプルに考えろ」 霧科が呟くようにそう言い、その通りに考えてみた。 要さんが休み。イービルレインの脅迫状。授業の中止。 ……待てよ。これって……。 「先生の身に何かあったのかもしれない」 「っ!?」 一瞬だけ目眩がした。 脅迫状なんて、おかしいと思ったんだ。 それなら合点がいく。 「……茜さんに話を聞かねぇと……!」 霧科と怜奈が小さく頷き、オレはドアに手を掛ける。 しかし、オレが開くより前にドアが開いた。 「……え?」 何事かと思い、開いたドアの向こうを見ると、なぜかそこには直久さんがいた。 黒いロングコートに身を包み、オレ、怜奈、霧科を順番に見たかと思うと、教室の中をグルリと見回した。 さっきの茜さんの話があったせいか、一瞬にして教室が静まり返る。 「あの……何してるんですか?」 「……身に覚えのある奴は来い」 オレの問いには何も答えずに、短くそれだけを告げ、去っていった。 何事かと思ったが、とりあえず身に覚えがありすぎるのでついていく。 後ろからもいくつかの足音が続いた。
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