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イギリス・ロンドン郊外
アウスメイダ公爵家、屋敷の寝室
「あれ……ここ、は……」
グレイン・アウスメイダは目を覚まして、ゆっくり体を起こした。
見慣れた部屋を、何度もまばたきをしながら見回すグレイン。しばらくするとベッドから降り、朝日が差し込む大きな窓に近づいた。
「やっと起きたか、グレイン」
グレインは弾かれたように勢いよく振り向く。
声の主は、腕を組んで部屋の扉に寄り掛かるルノアス・ベアトーズだった。貴族の正装のような服装をしており、見た目は20歳前後くらいである。
「ルノアス……なぜ、ここに?」
グレインの言葉にルノアスは思わずため息をついた。
「何を言っているんだ、グレイン。1週間前のことを、もう忘れたのか?」
「1週間前、ですか?」
どうやらグレインは1週間という長さに頭がついていっていないようだった。
「まさか、僕と"契約"したことを忘れていないよな?」
ルノアスの一言で1週間前の出来事を思い出したのだろうか、グレインの表情が急に暗くなった。
暗い表情のままのグレインにゆっくりと近づいて、ルノアスはある程度の距離に来たところで歩みを止める。
「1週間前に一応"契約"はしたが、お前から目的を聞いていない。目的を言ってくれ」
「私は妹のレネスラーを守りたいと、言ったはずです」
「確かにそれは聞いた。でもお前には、妹を守る以外に本当の目的があるんじゃないのか?」
ルノアスの言葉に対して、グレインは一瞬驚いたような表情を見せた。
そして、何かを考え込むように目をつぶる。
その数秒後、グレインは決意を固めたのか、目を開き、ルノアスをじっと見つめて言い放つ。
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