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「私を騙した死神クーラオル・アベリットを、倒したい」
「……そう言うと思ったよ。分かった」
ルノアスは表情を変えずに、ただ静かに頷いた。
「これで正式に"契約"を交わした。命令がなくとも、僕は契約者のグレインを守る行動は必ずとる……と思う」
「"思う"、ですか……」
「とにかく!契約を交わした以上、僕はグレインの命令を"絶対"に聞く。……どんな命令でもな」
ルノアスが言い終えた直後、グレインは少し顔をしかめて自身の右目を押さえた。
だんだんと険しい表情になりながら、部屋に置かれている身長大ほどの大きさの鏡に向かうグレイン。
「黒が……赤紫色に……?」
「どうやらグレインの場合は、目に"契約"の証(あかし)が現れたようだな」
いつの間にかルノアスは、グレインの顔を覗き込んで左右の瞳を見ていた。
「薄い紫に少し赤が混じっているだけだ。両目を見比べても違和感はないぞ?」
「見た目に関しては、気にしていません」
グレインは鏡から離れて、ベッドに座る。
ルノアスとグレインが無言になったとき、突然寝室の窓が割れた。
ルノアスはグレインを守るように、窓に近い場所に移動をする。しかし。
「誰も入って来ませんね……」
しばらくすると、割れた窓から悪魔のジング・オベラウトが寝室に侵入してきた。ジングだと分かった時点で、ルノアスは緊張を解いた。
ジングは明るく元気な少年のようであり、冷静なルノアスとは真逆のタイプの悪魔である。
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