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ジングは何かを思い出そうと少し考え込み、「あ、思い出した」と言ってルノアスに向き直って言う。
「ルノアス様、王からの伝言があります」
少し間をおいてから、話し出すジング。
「『"契約"が終わり次第、悪魔界に戻って来てもいい。帰って来たら、すぐに私のところへ来い』。こんな感じです」
「分かった。まぁ、"契約"がいつ終わるかなんて……僕には分からないけどな」
ルノアスはずっと黙っているグレインの方をちらりと見た。ルノアスの目線に気づいたらしいグレインは反論をした。
「"契約"をしないかと言ったのはルノアスですよ?」
「誤解をしないで欲しいな」
グレインはルノアスの言ったことがよく分からないという風に、少し首を傾げた。
「僕は『"契約"をしないか』とは言った。『"契約"をしてくれ』とは言っていない。お前が判断したんだ」
「……」
グレインは反論出来ずにただ視線をさまよわせた。
つまり、グレインはルノアスの"言葉"に惑わされてしまった、ということになる。
ルノアスは暇そうにしているジングの方を向き、ジングの名前を呼んだ。
「僕に話すことはまだあるか?ジング」
「うーんそうですね……ないと思いますよ」
「分かった」
ルノアスはジングが割った大きな窓の近くに移動した。
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