一ノ刻 -迷い餓-

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夏休みに入ってもう1週間。 相変わらず、うっとおしいねっとりとした夏の暑さと、耳を押さえておきたいほどの蝉の鳴き声。 私、麻生 珠稀は汗だくの額を拭くと、また歩みを進めた。 家に帰ると、そこにはいないはずの、親友の姿。 海里は私を見ると、焦ったような感じで駆け寄ってきた。 「珠稀!!お母さんの居場所見つかった!!」 海里は心配の色で私を見ながら言う。 私の母親は、5日前から行方が分からなくなっている……。 いつも、ケンカばかりして何度も困らせて、「居なくなればいい」なんて、言ってしまった事もあった。 いつも、いつも、邪険に扱っていたのに、居なくなってしまってから、急に心配になって一生懸命に母親の事を探している……。 凄く矛盾してる… 私は初めて、なくなって気づく…という事を知る。 なんであんなこと、したんだろう? そんな思考が頭の中を駆け巡る。
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