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「あいつにも触らせたの?」
答えは分かっていたけど、少しの希望が顔を出して俺の口を動かした。
「……あい…つ……?」
急に問われたからか、心当たりがないからか、逆に俺に聞き返してきた。
「さ、……さき…くん?」
名前を聞いた瞬間、胸がドクンッと跳ねた。
4年ぶりに佳奈の口から出た男の名前は、物凄い速度で俺を劣等化した。
弟の俺と、
佳奈となんの関係も持たないないササキ。
そんなの、男としてどっちを選ぶかなんて、分かりきっている。
そうだ、ちょっと考えれば分かること…。
俺が佳奈に恋をして迷惑なんてすぐ分かる。
俺と違う男の方が佳奈は幸せになるに決まってるじゃないか。
ただそれをしなかった。
自分でも知らないうちに、考えるのをやめていた。
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