異界転送

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「――と、そういう訳じゃ。諦めろ」 「ざっけんなよ! それで俺はこんな危なっかしい世界に連れて来られたってのか!? 信じられん……いや、信じる信じない以前の問題だ、話にならん! 常識を考えろ!」  俺が酷く憤慨している原因は、主に二人。一人は俺の前に仁王立ちで突っ立って踏ん反り返っているこの糞悪魔。  そしてもう一人は、悪魔を認識できるという才能を持っている俺自身にだ。 「まあ、物も考えようじゃ。この世界には我以外にも総勢十四人の悪魔がおる」 「それがどうしたってんだよ」  俺は自分という器から溢れ出る苛立ちを抑えることもせず、悪魔の言葉に噛み付く。  悪魔は大して怒るような様子もなく、「まあ黙って聴け」と俺を諭した。その余裕な態度がさらに俺の怒りを煽る。  だが、いくら多大なる身体能力を得たところでこの悪魔に勝てる訳もないので、言われたとおりに黙って聴く。言い忘れていたが、今の俺は“平凡という才能”を奪われたことで、平凡以上……もっというと、異常な身体能力を手に入れた。悪魔の話によると、こればかりは完全に運任せなので、俺はラッキーらしい。  ついでにいうと、才能を盗られた時点で既に契約が完了しているので、俺は悪魔の言霊の支配を受けない。立場的には俺の方が上だかららしい。  そして一番重要なのが、契約が完了した悪魔は人々の目に映るということ。一般人にも存在が認識されるのだ。 「契約した我等はな、主人の命令で姿形を自在に変えられるのじゃ。つまり……」 「ハーレム……!」 「そういうことよ。面白そうじゃろう?」  台詞を遮ったのにも拘らず、悪魔は上機嫌に厭らしい笑みを湛えてこちらを見ている。この悪魔は怒ったことがあるのだろうか。
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