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……はは。何だそれ? ハーレム?
「――最っ高じゃないか……!」
「じゃろう? さあ、早く我に命令を出して……」
いや、だが待て。甘い話には裏があると、今までの経験で分かり切ったことじゃないか。才能とは別に、そこの場面場面で何かを“盗られる”のかもしれない。甘い蜜を吸わせておいて、最終的には骨までしゃぶりつくしてやろうとしているのかもしれない。いや、きっとそうだ。
「何を黙り込んでおるのじゃ。さっさと我に言付けを!」
「……何を盗る気だ?」
「……警戒、しておるのか。そうか、そうだな。……無理もない。いきなり悪魔と呼ばれる者を信用しろという方が無理難題じゃて」
悪魔は憂いを帯びた表情で納得するが、その反面、どこか納得いかないと言いたげな諦めた口調が俺の鼓膜と良心を突いてくる。
信用は、してやりたい。だが今は保身が最優先なのも事実だ。
「しかし、良いのか?」
悪魔が心配そうな瞳でこちらを覗き込んで……って、先に美少女に変身してからしろよ。気持ち悪いじゃねえか。
「その、何じゃ。一人でこの世界にいても、結局はずっと独り身じゃぞ?」
悪魔は孤独と言いたいのだろうが、その言い方やめろ。独身みたいに聞こえるだろ。
……いや、しかし確かに、俺はこの世界では天涯孤独だ。
――それならば、死ぬのを覚悟してでも選択に及んだ方が良いのではないだろうか。うん、そうしよう。どうせ一人でいたって、死ぬ時ゃ死ぬしな。
「……分かったよ」
「っ……! それでは、主!」
「あ、アルジぃ!?」
少し驚いたが、美少女が俺のことを主と呼ぶ姿を想像してみた。
萌えた。
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