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その後、俺達は仲良く談笑しながら適当な宿を探し、同じ部屋の同じ床に着いた。敢えて言おう、やましいことなど何一つ無いと。
「だってほら、鳥はこんなにも僕達を祝福してくれているのだから!」
「……主、何をしている?」
窓に向かって腕を広げ、演劇さながらの仰々しい動作をする俺を不審に思った美少女が質問する。実は俺達、寝起きだったりします。寝起きはテンションが高いんだ、俺は。
……いや、そうじゃないだろ。何で俺は昨日会ったばかりの、それも悪魔と一緒に寝て、しかも情事に及んでんだ。
演技だと分かっていても、可愛い声を出す悪魔に欲求を抑えられない俺が憎い……!
「その……何だ、正直、昨日はすまんかったな」
「いや何、人間の欲求に従っただけじゃよ。それに、お陰で何だかフワフワした感覚を味わえたからの。あれが快楽というやつか、中々くせになる」
恨まれてはいないようなので、安心した。いや、そもそもあれで恨まれてたら逆ギレもいいとこなんだけど。
……まあ泊まりだけの予定だし、起きたんだったらさっさと町を出ますか。
俺と悪魔は崩れたシーツを丁寧に直し、一晩眠った有難い部屋を出た。
「お疲れ様でした」
帰りがけに宿の主人がそうからかってきたが、休ませる場所で疲れさせてどうしたいんだ。まさか疲れたからもう一晩とか思わせたいんじゃなかろうな。ちなみに、言われた後俺は微妙な顔をしてそそくさと出ていった。
そして今は、町を出て関所に向かっている途中だ。何でも金を払わないと通れないらしいが、わざわざ俺が金を払う義理はない。道行く人と仲良くなって合理的に奢ってもらうのだ。
そして関所に並んでいる人の中から、既に金ヅルになりそうな奴の目星は大体ついている。
気の弱そうな青年を護衛に連れている、馬車に乗った気の弱そうな小太りの中年だ。
「おい」
俺が声をかけると、護衛の方が「あっ、はい、すいません」と答えた。気の弱そうな、ではなく気が弱い青年だったようだ。
「あっ、貴方悪魔師ですね? ああ、見抜いてしまいましたか、すいません」
「っ――!?」
青年の言葉に、美少女が驚いて俺の後ろに隠れる。可愛いな、おい。
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