そんな訳で

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そこはマンションの一角だった。ちょっと待ってて、電話して来るからとユミナはいなくなった。やっと一人になるとちなみはほっとため息をついた。小さい頃読んだ物語の中ではちなみは必ず主役だった。そこではいつも、何とも言えない王子さまを引き立て料理するのが仕事だった。 「まあいい。何はともあれ行動を経ずして結果は存在せず。百洛百洛の…」 マンションのドアが少し隙間を作っていた。 ユミナがいればドア開いてるー開いてるー入ろう入ろうと大騒ぎするんだろうな。うん。 ちなみは頭を振り今の妄想と戦った。とにかく覗くだけならいいんじゃない?ユミナが満面の笑みで宣う。知らず知らずちなみの眼は扉の先に注がれた。 部屋は暗くて、よく見えない。 薄暗い窓からの光は、時折差し込んでは掻き消すようにまた闇に帰す。 「まあ、どうせこういう小説の結末は、結局、誰もいませんでしただとか、人と思いし影はガラクタでしたね、だとか、しょうもない落ちがついて回るのだろ?」 頭の中でユミナが笑う。それに釣られて思考が正常に集束しない。 「とにかく開けてみようホトトギス漢字不明」 少し開くと人影が見えた。ぼんやりそれは浮かび上がる。 不気味に感じて扉を放した。いきなり肩を叩かれた。 「キミ何してんの?もしかして、見た?部屋の中を見てしまった?」 「あいや、見てません」 「じゃ『袋』の中身は?そこらに積み重なってたろ?」 「ゴミ掃除をしていませんか?」 「ダメなんだよなあ、全く困りました。ここを嗅ぎ付けたのが先ず不味い。オレと君が会話してること自体が、既に不味い」 「何ですか?」 「知りたがる子は好きです。好奇心は必ず人を救います。だけど、どうして君はオレに興味持っちゃったんだろうか。ケケっ」 「ねえ、何して…鎌?」 「良くないなあよくないよくない。危険危険。どうしよう、帰す機会失っちゃったようだよ?まあ僕は何て言うかその、こんな子嫌いじゃないから。首綺麗だな。白くて雪と月の…あ、もういいや」 ぽろっと首が滑り落ちました。彼はゆっくり部屋から袋を取り出しそれを入れました。 じゅぶじゅぶと千切れた頸動脈から血と泡が湧いてくる頚から下を、困ったように見ます。 どう始末するんだろうかと今回は他人事です。 そうしてるうちにも血は愉快そうに色を染めます。 「ちょっと何どうなってんの?」
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