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人前で馬鹿な話をするのは流石に嫌なのか、すれ違う時、彼女は黙っていた。
「なあ、名前が無いと不便じゃないか?」
「うん……そうだね。適当に呼んで良いよ」
そう言われると、何も思い付かない。
……何だろう。
そんな一気にテンション下げられてもなぁ。
自分の名前すら忘れたというのは、相当に辛いものがあるのだろう。
この話題は避けた方が良いのか。
と言っても呼び名が無いのはこちらにとって不便だ。
早く決めて、話を切り上げなければ。
僕が口を開こうとした時、視界の端に映ったものがあった。
視界の端、道の端の塀にこちらを向いて張り付くように立っていたのは、
女の人。
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