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「亜姫~、待ってよ~。」
中学から、ずっと一緒の麗奈が追いかけてきた。
この春、高校三年生になった私達。
始業式のため、今日は午前中のみ。
穏やかな日差しの中、満開の桜並木を二人で歩いた。
麗奈とは、進路が違うので、来年の桜は一緒に見られないかもしれない。
そんなことをふと考えていると、
「ねえ、亜姫知ってる?なんで桜の花びらがピンクなのか。」
さあ?と言った顔をすると、麗奈は続けた。
「昔、災害が起きると、神様に人柱を立てて怒りを鎮めてもらおうとしたんだって。生きたまま埋められた人の上に、桜の木を植えたから、人を養分に育った桜は、ピンクの花を咲かせるんだって!」
得意気に話す麗奈に、
「それなら、なんで赤い花じゃなくて、ピンクなのよ?」
「桜はピンクの方が、かわいいじゃん。」
「それじゃ、言ってること意味ないじゃん。」
私が、わざとらしい怒ったふりをすると、
「あはは。ゴメンゴメン。迷信だよ。」
麗奈は、大笑いしながら逃げるように走り出した。
私も笑いながら追いかけた。
ずっとこんな風にいられると思っていたんだ。
麗奈…。
桜の木には、鬼が住んでいるんだよ…。
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