消えた日常

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2011年3月11日2時46分 東北地方太平洋沖地震 マグニチュード 国内観測史上最大9.0 おれは立っているのが困難になり掃除機を支えにしていた。 揺れは長く、そして激しかった。 押し入れに入っていた荷物が落ちてきた。 それでも揺れは止まなかった。 おれは揺れの中で理性を取り戻しつつあった。 掃除機を支えにしたままなんとか扉を開けた。 そして携帯を思い出し見ると緊急地震速報が届いていた。 しばらくして揺れがおさまった。 周りを見渡すと物が散らかり、あの写真はテーブルの下に落ちていた。 おれは部屋を飛び出し、山本さんを探した。 山本さんもすぐに給湯室から飛び出してきた。 「おい田中、大丈夫か!?」 「はい、なんとか。」 「とりあえず外に出よう。」 2人はロビーに向かった。 本来ならお客が部屋に残っていないか確認すべきだっただろうが、自分のことで精いっぱいだった。 ロビーには他の従業員の仲間や旅館に残っていたお客さんが来ていた。 みんなの無事を確認していると放送が入った。 『津波が来ます。高台に避難して下さい。』 おれは速やかにお客を近くの高台に誘導した。 誘導し終わったあともう一度旅館に戻り残っている客がいないか確認し、更衣室に行き適当に自分のものを持って再び外に出た。 するとさっきの写真の男女がやってきた。 「お客さん!津波が来ます!案内しますから高台に!」 「すいませんが、どうしても取ってきたいものがあるんです。ぼく何度かここ来てるんで、だいたいの地理はわかります。先に行って下さい。」 「急いで下さいね。」 おれはそう言って高台に向かった。
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