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悪人の物とは言え、あまりにも堂々と人の物を強奪した姿に、どっちが悪人か一瞬分からなくなる。
黒髪の男は、仲間をやられ、激昂する三人を見て、『チッ』と舌打ちを打つ。
「面倒だ……」
顔を歪め、本当に心の底から面倒くさそうに言い放ってから、
ゴソリ、と。
どこからともかく、巨大な武器を取り出した。
どこに隠しもっていたのか、本当に謎なその武器は、十手をそのまま大きくしたような物――所謂、兜割(かぶとわり)と呼ばれる武器だった。その長さは1m程で、刀の様に湾曲し、鉄の棒に近い形状をしていた。
「らあっ!」
そんな兜割を、軽々と右手に携え、向かってくる三人に、ブオン! と横に薙ぎ払った。外見は女だと勘違いする程華奢(きゃしゃ)であるにも関わらず、軽々と振るう。
そして、連撃。
兜割を、振り上げ、テニスでスマッシュを打つかのように、力任せに敵の一人の脳天目掛けてぶっ叩く。
耳を塞ぎたくなるような鈍い炸裂音。そして男の手から装備していたナイフがこぼれ落ち、ドサッとその場に崩れ落ちた。
しかし、黒髪の男は、気絶したかどうかを確認せずに、息をつく間もなく、そのまま右足を軸に反転。そしてもう一人の鳩尾に左肘を突き刺す。
それが綺麗に決まり、体がくの字に折れ曲がる。
そんな瞬間。攻撃の直後の隙を狙い、もう一人の男が放った槍が、黒髪の男を狙う。
「うおわっと、危ねッ」
肘鉄の直後、続けて連撃を加えようとしていたが、慌ててその動作を一時中断。兜割で、槍の矛先をずらすように、刺突を捌く。
そして、後方へとバックステップを一、二、三と続けて距離をとった。
槍を持った一人と、肘鉄のダメージが少し残っている男が、その距離を詰め、黒髪の男に迫る。
それを見て、黒髪の男は、整った顔を歪めた。対多人数では、囲まれたらそこでタコ殴りである。それらの機会を潰す為に、なるべく一対一で倒していたのだ。
最初の奇襲しかり、厄介な銃の持ち主しかり。敵の数を減らすのが重要なのだ。
更に、今は傍観してくれてはいるが、いつリーダー格の男が参戦するかもわからない。
まずいな、と黒髪の男は思った。
そこに、槍とこん棒を持った二人組が雄叫びを放ちつつ迫る。
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