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槍とこん棒を持った二人組が、黒髪の男へと迫り来る。
ギュッ、と兜割を強く握り、
「行くぞォオオオオ!!」
「「うおおおおおおおッ!」」
叫び声が重なる。
それは、戦いの中に生きる男――否、漢(おとこ)達の灼熱の咆哮。今、改めて漢達の戦いの火蓋が切って落とされ、
パアンパアン、と。
「ば……馬鹿なっ! くうっ」
「ぐァあああああああッ!!」
二つの銃声で、戦いは終わった。たった今終わった。改めて切って落とされて、約一秒程で終わった。
……何故戦いが、こんな直ぐに終わったのか。答えは簡単にして陳腐。黒髪の男が、先程強奪した銃を遠距離でぶっ放したからだった。無傷で無痛に無価値に無責任に、戦いを終わらせた。
唯一、良かった事と言えば、足を撃ったので死んではいないと言う所であったが、二人共、倒れた直後にしっかりと、兜割で殴打され、トドメをさされた。
「「えェえええええーーッ!」」
旅人の男と、リーダー格の男が、同時に(カツアゲをしたされたの関係なのだが)仲良く叫んだ。あまりの理不尽な、戦いの幕切れに対して、である。
「……ふぅ、終わった」
「『終わった』じゃねェエエエエエエエエッ!! 改めて戦いの火蓋切って落とされたじゃん! 熱いバトルシーン始まる所だったじゃん! なに勝手に、終わらしてんのォオオオオ!!」
「テメェエエエエ!! 俺に奇襲仕掛けた挙げ句、最終的に敵の武器で卑怯に勝つとはどういう了見だァああああ!! それでもテメェは主人公か!!」
黒髪の男は、二人の言葉に、喧しい(やかましい)なぁ、と眉間にシワを寄せて、
「煩せえなあ、お前ら。そんな、心踊るようなバトルシーンが見たいんなら余所いけ、余所。そんな『友情』『努力』『勝利』なんてバトルは、他が遣ってくれる。正直、オレは『勝利』を手にする為ならなんだっていいんだよ」
「主人公にあるまじき発言! なんて人で無しなんだ! 台なしだよ、お前!」
「え! 僕をカツアゲしておいて、それ言うの!?」
間髪入れず、リーダー格の男はそう言った。正直この男は、旅人の言う通り、そんな事を言える立場ではないのだった。所詮、人で無しのチンピラである。
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