カツアゲって、響きだけ聞けばなんだか美味しそう。

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「そんな、くだらねェお喋りはもういい」 黒髪の男は、一刀両断。 話の筋を、無理矢理修正する。 「残るはテメェ一人、さて――どうする?」 「はっ……!」 黒髪の男のあまりの理不尽さに、思わず忘れていたが、リーダー格の――いや、リーダー格“だった”男は現状を把握する。  自分の仲間全員が、既にやられている事を。握っていたハズのこの場の主導権が、すでに自分の手からはうしなわれている事を。そして、その主導権はこの黒髪の男が握っている事を。 「覇覇ッ」 その瞬間。相も変わらず、邪悪な笑い声が、空気を振動させ、リーダー格だった男の耳に届き。 じわり、と大粒の粘っこい汗が、頬を伝うのを感じた。 「ひ、ひいっ」 情けない声が漏れる。 狩る側だった自分が、いつの間にか、狩られる側へと追いやられていた。残酷かつ嗜虐的に、黒髪の男は笑顔を浮かべて、 「寛大なオレは、君を見逃してあげよう。だけど、その変わりに――出すもの、あんだろ?」 「はっ……?」 先程、自分が言った台詞を返された――いや、跳ね返ってきた。だが、恐怖に侵されたリーダー格だった男には、そんな事を気にする余裕すら無かった。ただ、受動的にその指示に従おうとする。 だが、そこで我にかえった。 手元には、自分が愛用している剣がある。起き上がってから、わざわざ取りに行ったのは無駄ではなかった。――まだ、これで終わった訳ではない。リーダー格だった男の瞳に、再び獣のように獰猛な光が灯る。 「……早くしろよ」 「す……少し待ってッ!」 いける。とリーダー格だった男は確信する。 (いまこいつは俺の財布に目が行っている。俺が剣を持っている事に気付いていない!) リーダー格だった男が、まだ怯えたフリをしているのも、相手を油断させておき、後でちゃんと殺す為の布石である。 「あっ、ありました」 「……おう」 「こっ、これです――」 そう言って、ガッ、と自分の剣を素早く取り、財布を出すと思い込んでいる目の前の黒髪の男目掛けて、全力で突きを放つ。 「もらったァアアアア!!」
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