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射程圏内。
リーダー格だった男の突きは完璧に、こちらの攻撃は届く。
はずだった。
「なっ……!」
リーダー格だった男は、目をひんむき、仰天する。
なぜなら。
自分が突きを放つよりも早く――既に、黒髪の男の拳が放たれていたからだ。
(馬鹿なっ! まさか、俺の演技が! 俺の計画が! ば、ばれていたというのかッ!)
「おおッ!!」
ズゴシャア! と凄まじい衝撃音が響き渡り、リーダー格だった男は、力無く後ろへと倒れた。なぜ、リーダー格だった男の不意打ちが失敗したのか――この理由も、簡単にして陳腐である。
ただ単に、『財布を出しても出さなくても、最初っから殴るつもり』だったのだ。不意打ちを企まず、素直に財布を渡したとしても、同じ結果だったのである。
奇しくも、悪人に容赦はしない黒髪の男の行動が、不意打ちを打破したのだが……。どっちが悪人かは、十人中十人が既に分からないだろう。黒髪の男は、天を仰ぐように気絶しているリーダー格だった男に近付き、
「『いやァ、悪いね。でも、これで済んで良かったんじゃないの? 死ぬよりはましっしょ』」
リーダー格だった男が言っていた台詞を、そっくりそのまま、打ち返した。なぜ、この台詞を一言一句間違えずに知っているかと言うと、悪事の決定的な瞬間を掴むまで、ずっと待機していたからだった。カツアゲをした、と分かった刹那、直ぐさま飛び蹴りを放ったのである。
余りにも、リーダー格だった男が不憫だった。しかし、それだけでは終わらない。黒髪の男は、ゴソゴソとリーダー格だった男の持ち物を漁りだす。
「えと、何を!?」
暫く、傍観していた旅人が尋ねた。若干リーダー格だった男に同情しているようだった。
「覇覇っ。オレはジーク。覚えとけ、いずれ役に立つから」
「はぁ……」
絶対役に立たねえ、むしろ厄介事に巻き込まれる気がすると思ったが、曖昧な返事で返した。
そして、改めて尋ねる。
「で、ジークさん。一体、あなたは何を……?」
「覇覇ッ」
ジークは、邪悪に笑ってから、
「金に成りそうな物を剥ぎ取ってる」
と、至極当然のように宣わ(のたまわ)った。まるで、某有名狩りゲームで、モンスターから剥ぎ取るかのように。
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