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激辛のカレーライスは、メニューにはあるが、あまりに辛い為、ジーク以外のリピーターは少なく、ほぼ居ないと言っても過言ではないのは、余談。
そんな激辛なカレーを口に頬張り、咀嚼し飲み込んで、ジークは話を再開させる。
「てーか、この美人面は、金には困らないんだが、女にモテないのが残念だ」
「なんでだ?」
「『自分より美人とは付き合いたくない』だと」
「…………あぁ」
「まだ子供の時は、オレはショタコンホイホイだったからよ。女も入れ食いだったんだが……」
ジークは小さい頃は、美少年としてチヤホヤされたが、大人になってからは可愛い――と、言うよりも、美人と言う容貌を呈すようになった。そのため、恋慕というよりは憧憬の念を送られているのだ。
要するに、綺麗な女性に声を掛けても、ジークが口説くよりも先に、『どうやったら、そんな綺麗な肌! 髪! 体型になるんですかぁ!』などと、質問されたりするばかりなのだ。
ちなみに、ジークの全ての回答は『何もしてない』だったりする。
「ふぅん。でも、それだったら、そっち系の女と付き合えばいいんじゃねえか?」
「そっち系って?」
「あ、あぁ……」
マスターは、少しばかり言葉を濁してから、呟くように小声で、
「……あれだ、同性が好きな女もいるだろ」
「そう言う事ね。そんなの、とっくの昔に、思いついてんぜ」
一度だけ、ジークはそういう女性と知り合い、口説いた事があったのだが――
「……ふられた」
「その顔でふられたのか?」
「要するに、『ついている』のと『ついていない』のの差は、思ったよりデカかったらしい」
「確かに、その差はデカイな」
「そうなんだよ。っかぁ~、オレはどうすりゃあいいんだ!」
そう愚痴を吐き、ぐいっとジークは酒が入ったグラスを口に運び、ゴキュッゴキュッと男らしく飲む。
その様子を見ながら、マスターは少し考えて、
「そうだな、仕方ない。もう最後の手段になるんだが……」
「な、なんかあんのか!?」
ガタタッ、と慌てて、ジークはマスターに、期待の眼差しを寄せつつ、そう問い掛けた。
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