豆乳も酒も、慣れれば美味いけれど、慣れない内は微妙。

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「もう、野郎で我慢しろ」 「ふっ……! ざけんなァあああああああッ!!!」 ジークは、絶叫した。 自分の出せる声量を惜しみなく、全て出して叫んだ。 「うっ、煩えぞジーク! 営業妨害だ、コラ!」 「黙れ黙れ黙れェ! 野郎となんざ、有り得ねえな!」 「大丈夫だ、安心しろ。お前さんなら、より取り見取り。どんないい男も取っ替え引っ替えが余裕で可能だろう」 「だーかーらァ! それが野郎相手じゃ意味ねんだよォオオオオ!! そんなんだったら、ヨボヨボの婆さんとくっつく方が、断然マシだぜ!」 実は、ジークは、フェミニストであり女尊男卑だった。紳士ではなく、ただ単に女好きなのである。  女装をして男を騙している時に、さんざ醜い部分を見てきたので、ここまで毛嫌いをしていたりする。男尊女卑の貴族の男は特に嫌いだと言うのは、余談。 マスターは、そんな激怒するジークを見て、嘆息した。 「全く、神様って奴は、確実に、お前の性別を間違えたよなァ」 「いや? オレは男で良かったと思ってんぜ。だって、もし女だったら、馬鹿な野郎を殴り倒して、金品巻き上げらんないだろ?」 「お前やっぱり、割とクズだな! いや、こりゃ真性だわ!」 やはり、自分の判断は間違っていなかった、とマスターは確信した。 ††† この街――『アスパル』は、夜になっても活動は止めない。チカチカと明かりを点けている店が目立ち、街の中心の大通りはそこそこ明るい。大概が、酒場や風俗だったりする訳だが。 この明かりは、なんでも他の大国の一つ――魔鉱石というモノを加工して、装置を造る魔科学と呼ばれる技術が使われている。 この技術は、国が独占しているので――ごく普通の一般人は、なぜ動いているのか、など一切知らない。  まあ、説明をされても分からない、と言うのが正しいのかもしれない。要するに魔術のチカラと言う事で、みんな納得してしまっているのだ。魔術については、国と貴族のみしか使えないのだから、仕方ない事である。 そんな、よく仕組みを知りもしないモノを、一般人達は生活の為に買い、利用している。
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