カツアゲって、響きだけ聞けばなんだか美味しそう。

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男は、ついていなかった。 心機一転、『アスパル』で頑張って行こうと思い、この街に来たのまでは良かった。だが、『滅魔戦争』から200年の月日は、一般人である旅人の男を、平和ボケさせるのには充分すぎた。 少し、酔っていたと言う事もある。だが、確かに『こんな危険な街でも、自分だけは大丈夫だろう』と、言う今思えば即刻糖尿病になりそうなくらい、甘ったれた考えがあったのは、揺るぎない事実だった。 更に、天は旅人の男に味方をしなかった。アルコールに冒された男の頭は、先程、酒場のマスターから聞いた『街のハズレは危ないから、近寄ってはならない』と言う事を、すっかり忘れてしまっていたのだ。 不幸の連鎖は続く。 街のハズレに迷い込んだ男を待っていたのは――屈強な体つきをした男達。見なりは、薄汚く、口にはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべている。 ここらで、よく跋扈(バッコ)しているチンピラのような輩だった。各人、刃物や鈍器などの武器を装備し、その姿は、まるで盗賊のように見えた。 そんな奴らが、好き勝手やっていると言うのに、警察や自治体は何をやっているんだと思われるだろうが、『アスパル』はどこの国の所有地でもない。  言うなれば、『アスパル』と言う独立した街なのだ。その為、それらの国で禁止されているような人身売買や薬物の売買などが平気で行われている。 そんな、危ない場所で。 男は、そんな盗賊のようなチンピラに、囲まれてしまっていた。 その数、五人。 そのうちの一人が、口を開く。 「お兄さんさぁ、旅人だよねー。『アスパル』には来たばっかだろ。そうなんだろ。当たりだろ。ダメだなぁー、こんな危ない所に来ちゃ。悪徳商人の手下なんかに捕まってみな? 即刻奴隷にされちまうぜぇ? ……まあ、俺らの事なんだけど」 ケラケラと、笑いながら、リーダー格らしき男は喋る。その男は、人を斬り過ぎたのか、それともただ単に手入れをしていないだけなのかはわからないが、所々錆び付いた剣を、肩に担いでいた。
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