カツアゲって、響きだけ聞けばなんだか美味しそう。

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「で、さあ」 その狡猾そうな男は、ギラリと目を光らせ、旅人の男を見据えた。まるで、獲物を目の前にした獣の如く。 「実際問題、女子供だったら、高く売れんのよ。でも、野郎は正直売れんのですわ。需要ないからねー、ウン。わかる?」 「…………」 あまりの恐怖に、旅人の男は声が出なくなった。まるで声が枯れてしまったのではないかと錯覚してしまいそうな程だった。 酔いは既に覚め、やたらと自分の周りの光景がクリアに見えた。 「…………」 ただ震え、一言も喋らない獲物である旅人を見たリーダー格の男は、苛つきを隠そうともせず、 ガッ、と怯えている男の耳を掴み、肩に担いだ錆だらけの剣を向けて、 「……返事しろよ。聞こえないってんなら、要らねえよな、その耳。どうせ売りモンにする気はねーんだ、俺達はお前の耳が斬れようがどうなろうがどーでもいい。なんなら――」 リーダー格の男は、少し目を細めて、剣の先端を目の前の男の喉ぶえにピタッとくっつけた。少しでも動けば、刺さってしまいそうな程。 耳をしっかりと捕まれているので、旅人の男は逃げ出す事すらできない。 ただ、恐怖するのみ。 「お前が死んだ所で、俺達は罪悪感なんざこれっぽっちも抱かねえ。強いて言うなら、服が汚れるのが嫌ってくらいなんだ。……お分かり?」 「はっ、はひっ……!」 「そうそう。んで、本題に入ろう。別にお前を奴隷として、俺達の雇い主に売り飛ばしてもいい。けど、そんなのは面倒だ。そ・こ・で! 寛大な俺達は、君を見逃してあげよう。だけど、その代わりに――出すもの、あんだろ?」 そこまで言って、にやぁと口を歪めた。 理不尽だ、と旅人の男は思う。これは、恐喝以外の何物でもないではないか。 「……ホラ、早く出せよ」 そもそも、金を渡した後に、コイツらが何もしないとは限らないではないか、と旅人の男は思う。しかし、やっている事は理不尽だが、主導権はあちらにある。リーダー格の男が言っていたのは紛れも無い真実であり、奴らは一介の旅人がどうなろうが、知ったこっちゃないのだ。 弱きは潰され、強きのみが笑う。 この街『アスバル』は弱肉強食の世界なのだと、改めて認識した。
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