カツアゲって、響きだけ聞けばなんだか美味しそう。

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だが、出さなくてはならない。それが自分が出来る最低限――否、それしかないのだ。選択肢なんて物はなく、たったの一択のみ。  旅人の男は、悔しさで歯噛みしつつ、自身ズボンのポケットに入っている財布へと手を伸ばし、財布を掴む。 旅人の男にとって、これは今持っている全財産。これを失ったら、旅をするどころか、生活する事も出来ない。だが、こいつらはそんな事はお構いなしに、ハイエナの如く、横から物を掻っ攫うのだ。 「…………くそっ!」 旅人の男は、そう言葉を発しながら、財布を差し出した。それを、リーダー格の男は、愉快そうに見つめて、受け取る。 ようやく、旅人の男の耳から手が離れた。捕まれていた耳は、赤くなっており、少し熱を帯びていた。 「いやァ、悪いね。でも、これで済んで良かったんじゃないの? 死ぬよりはましっしょ」 リーダー格の男は、錆び付いた剣を地面に突き刺し、中身を確認する。 「……うはっ、あんた結構持ってんじゃん♪」 リーダー格の男は、声を弾ませた。その声に反応して、その男の隣にいた仲間が『おいおい、一人じめはすんなよ?』などと直ぐさま発言。それを起爆剤とするように、今まで黙っていた輩も次々と喋りだした。リーダー格の男は、何人もの男が姦しく(かしま)話すのを、少し煩わしく思ったのか『落ち着けって』と制止を促し、嬉々と笑いながら口を開く。 「ははっ、大丈夫だって! 例え、山分けしても、酒や女買うには充分あらべぶッッ!!」 途中で、リーダー格の台詞は中断させられた。なぜなら、ドゴッ! と、リーダー格の男が強烈に蹴り飛ばされたからだ。 さっきまで、饒舌に喋っていた男が、炸裂音と共に砲弾のように横へ吹き飛ばされ、地面をバウンドする。その光景に意識が着いてこなく、カツアゲされていた旅人の男と、カツアゲをしていた男達は硬直した。 しかし、ただ一人の例外。 その光景を自ら作り出した人物は、悠々自適に大胆不敵に唯我独尊に悪逆無道に、 「……覇覇ッ」 と、自分が行った事を歯牙にもかけず、嘲るように笑う――いや、嗤う。
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