鳴らない電話

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 突然、夜が小さく鳴いた。 隣で座りながらこちらを見ていた。 夜の目は優しかった。 夜の目は青くて綺麗。 擦り寄るのでも、慰めるでもなく夜は泣いている私のそばに座っていた。 涙が止まるまで夜はそばにいた。 とてもやさしい時間だった。 泣きやんだ私を見て小さく鳴いて夜は去って行った。 夜のいたベンチは暖かくてもう悲しくはなかった。 電話はならない。 でも寂しくなかった。
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