常識

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 宴会の席で、毒舌を披露する男がいる。彼は、いつもこうなのだ。  男は、必ずなにかをターゲットにし、話をする。それは、政治であったり、主婦であったり、若ものであったりするが、彼の口が、批判をしないはずがない。  それに対して、苦笑いをうかべるものが大半だが、そのもの言いに、気分をよくするものも少なくはない。  今日のターゲットは、常識らしい。それも、大人にしぼられている。 男は言う。 「甥からきいたんだが、だいの大人が大学の講義に出たとき、ふんぞり返りながら授業をうけていたらしい。しかも、そいつときたら、背のびをしたり、携帯電話をいじりだしたり、しまいには、寝やがったんだとさ。こいつは、バカだ。金髪のガキじゃないんだぞ。まあ、君たちの言うとおり、前日に、何か抜きさしならないことがあったのかもしれない。だけどな、俺たちは大人なんだよ。ガキたちの見本となる俺たちが、できの悪いガキと同じレベルに立ってどうする?そうだ。お前、いいこと言うな。政治家たちも、そいつと一緒だ。バカだ。おおバカだ」  男は言う。 「今日、客をなめた飯屋に入ったんだよ。メニューを出すまで五分、注文をとるまで五分、料理が出てくるまで三十分。言っとくが、カツ丼屋だぞ。ん?ああ、もちろん時間は大体の感覚で話してるに決まってんだろ。客もそこそこ入ってたし、厨房には他にもいただろうが、接客する店員は、いい歳をして化粧をぬりたくった女が一人。まあ、しかたがない。だがな、髪を出すんじゃねえ。適当にバンダナを結びやがって。それにだ。提供時間が遅れてもいいから、客が食ったテーブルを片付けろ。汚い丼を見せられて食う飯が、うまいはずがねえだろ」
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