常識

4/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 男は、自分の口の悪さをわかってはいない。  男は、いつも自分の考えを中心に話をする。  男は、自分が常識のある人間だとおもっている。  男は、世間が自分の意見をわかるものばかりだとおもっている。  男は、まわりの人間の苦笑いを感じていない。  まわりは、男の悪口をかげで言う。  まわりは、男のもの言いが、間違ってはいない気がする。  まわりは、男のもの言いが、きつすぎると感じる。  まわりは、男のもの言いを、最高だとおもう。  まわりは、男の常識をはねつける。  まわりは、男の常識を取り入れようとする。  宴会が終わる。  男は、家に帰る。一人暮らしにとっては、なかなかに広いマンションだ。  男は、今日も自分の意見を待ち望むパソコンの住人のために、ブログを更新する。内容は、宴会で吐いた毒だ。  男のブログは、なかなかに人気がある。ブログの常連は皆、彼の常識の虜なのだろう。  そうなるのは、まわりが、男のすべてを知らないからだろう。  男は、きょうも裸でパソコンに向かい、カフェオレよりも甘い、ブランデー入りのコーヒーを片手に、恋人の和馬を待っている。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!