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「なんだよ。急によび出して」
友人は文句を言いつつ、アパートの一室に、足をいれた。部屋の中は、なかなかに綺麗に整理されている。
ここは、青年の部屋だ。
「なんだじゃないだろ。見てたぞ。電車のできごと」
「は?電車?」
青年は、鼻をならした。
「しらばっくれるなよ。見てたんだよ。あの、女の子の告白を、無視しつづけたお前をな」
「女の子?」
「そうだよ。お前のとなりにすわってただろ?」
友人は、首をかしげる。
「行きも帰りも、誰も俺の横にはすわらなかったけど」
青年は、声をあらげた。
「いいかげんにしろよ。俺は見てたんだよ。お前が無視したあげく、すいません、うるさいんだけどって言って、その子から離れてったのをな」
「いや、だからなに言ってんだよ。そんな女の子知らねえって。うるさいって文句言ったのは、地べたにすわって、大音量で音楽を聴いてたやつらに言ったんだよ。たく、なんなんだよ」
「え……」
「そしたらそいつらさ、にらんできたから、危ないから逃げたの。オーケー?」
言葉をうしなった青年を見、友人は手をたたいた。そして、笑った。
「ああ、そっかそっか。お前そんなキャラだったっけ?今日、エイプリルフールだもんな。お前、俺をびびらせようとしたろ?」
「え……いや、その……」
「いいよもう。ばれてんだよ。お前、おしゃべり久美ちゃんなんかで俺を脅かそうとしたって、騙されっかよ。いいって、もう。おしゃべり久美ちゃんだろ?しつこく話しかけてきて、無視してるといなくなるけど、会話しちまうと、惚れられて死ぬまでつきまとう幽霊。うっかり彼女なんかつくっちまうと、嫉妬して呪われるってか?ネタが古いんだよ。マイナーな都市伝説じゃねえか。ん?どうしたよ。窓なんかじっと見て。それに、なんだか顔色が……」
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