○○ローグ

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どうしてこうなったのだろう。考えてみた。考えに考えてみたけれど、皆目見当がつかなかった。自分がこれだけ考えても分からないのだ。それなのにこの仕打ちは理不尽としか言いようがない。 どうして自分だけこんな目に合うのだろう。どうして自分だけ不幸な目に合うのだろう。どうして誰も気付いてくれないのだろう。どうして誰も救い出してくれないのくれないのだろう。 フィクションの世界じゃ、救われる人間の方が圧倒的に多いのに、現実の世界だと救われない人間の方が圧倒的に多い。 そして自分も――救われない方の一人。 こんなところで、お前は極々平凡で大多数の人間となんら変わらないみたいなことを思い知らされるなんて思いもよらなかった。 誰も助けてはくれない。 神様も正義の味方もどこかの国の王子様も法も身近な友達も知り合いも誰も彼もが救ってくれない。 もう嫌だ。こんな世界は存在する価値なんてあるのだろうか。あってもなくても変わらないのではないだろうか。存在に値する理由でもあるのだろうか。理由があったとするなら、自分が今置かれているこの状況にも何か理由があるとでもいうのだろうか。 だったら教えてくれ。どこに訊けばいい? 神様なら答えてくれるのだろうか。いや、もうこの際、誰でもいい。お願いだから教えてくれ。 誰も問いかけには答えてくれない。それはそうだろう。そんなことは最初から分かっていた。ただ、すがってみたかっただけだ。 ごめんね。ごめんね。 あいつなら答えてくれるだろうか。あいつは答えを知っている。これは自信を持って断言出来る。だけど答えなんてものは得られないのだろう。先程から『ごめんね』しか繰り返さないあいつが、まともにこちらの質問に答えてくれるとは思えない。 そこで不意に、新しい音がする。 あいつの耳障りな声と地理上発生する断続的な騒音が響く、この状況においてもそれははっきりと認識出来た。 ごめんね。ごめんね。 覚悟はもう決まった。いや、覚悟の有無なんて、ここでは関係ない。そんなものがなくても状況は止まらないのだから。 ごめんね。ごめんね。 言葉はやはり止まらない。 どうせ悪いとは思っていないだろうけど、少しでも悪いと思っているのなら、お願いだから、黙ってくれな――
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