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「私は妖精、名前はコーダだ。これで信じる気にはなったか?」
「……まあ、ちょっとは」
頭の中に響く声に、ユーリはバツの悪そうな表情で答える。妖精というのは、特別な者にしか見えない。それこそ、勇者などがそうだろう。
しかし、伝説の中にだけ出てくる存在だから、妖精がどういう外見をしているのか分からない。見ることができる者も少ないため、余計に分かるわけがない。しかし、目の前にいるのが妖精以外で何に見えると訊かれたら、妖精にしか見えないという答えしかない。
「それで、信じてもらえたわけだが……勇者として力を貸してくれるね?」
「いや、だが断る」
「そうか。まあ、世界が危機に晒されているわけだし、受けてくれるのも当然……は?」
改めて言ったコーダの言葉に、ユーリは間髪入れずに首を横に振った。まさかの返答に、予想していなかったからか、コーダはつい納得したように頷き、満足そうに話を進めようとして、ようやく相手が言った言葉を理解した。
「いや、だから断るって」
理解して茫然としているコーダに、だめ押しとばかりにユーリはもう一度そう言った。今度ばかりは、コーダもすぐに気付く。
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