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「断るって……なんでだ!? 魔王によって世界が滅ぶかもしれないんだぞ!? それでもいいのか!」
事が事だけに、コーダは人間の肉体を持っていれば掴みかかるであろう勢いで詰め寄ってくる。そんな勢いにユーリが足を半歩下げつつ、少し沈んだ表情を浮かべる。
「……何か、理由があるのか?」
そんな表情を見れば、コーダは一体どんな断る理由を持っているのかと思うと同時に、どんな悩みであろうとも優しく諭してみせると決意した。そして、ユーリは口を開く。
「──いやね、勇者なんて魔王倒すためだけの存在じゃん? 魔王倒したら倒したで、そのすぐ後は注目されるけど、しばらくしたら飽きてポイ捨てされそうだし」
なんていうか、目的達成したらすぐにお払い箱じゃん? と言うユーリに、今日何度目となるか分からない予想外の事態に、コーダの思考も動きも固まった。
「そんな一時的にしか目的がないものなんか、やりたくないね。明らかな社会の歯車の一部になりたくない」
そんなコーダの様子に構わず、自分の意見を主張し続けるユーリに、コーダは気付いた。ユーリは行き過ぎながら勇者に適したしっかりした性格だが、僅かに中二病があるようだ。
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