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「……ちなみに参考までに聞きたいんだが、嫌がらせってどんなものなんだ?」
気迫に圧されて反論できずにいたが、せめてもの反抗のようにユーリがそう訊ねれば、コーダの鼻で笑うような不敵な笑いが、ユーリの頭の中に直接響いた。
「知りたいか? まず靴という靴にびっしり虫を詰める。次に野菜を切るとその断面からおびただしい鮮血があがる幻覚と、その野菜があげる断末魔の幻聴が聞こえるようになる。更に──」
「もういい、分かった」
想像するだけで気分の悪くなってくる嫌がらせの数々に、その様子を想像してしまったユーリは、僅かに顔を青くして首を横に振った。
それを見たコーダは、どうだと言わんばかりに鼻を鳴らす。悔しいが、その嫌がらせは恐ろしい。ユーリは何も言うことができなくなっていた。
「さあ、どうする?」
それが分かっていながら、コーダは敢えてもう一度ユーリに訊ねる。表情を浮かべているのなら、今のコーダはユーリに見下した目を向け、せせら笑っているだろう。
ここで断れば、コーダは本気で嫌がらせをするだろう。だからといって、勇者になるというのも御免だと思った時、一つの案が浮かんだ。
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