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「……分かった、魔王討伐の旅に出よう」
「……初めっからそう言えばよかったんだよ。ったく、面倒を──」
「しかし、だ。受けるには一つ条件がある」
渋々といった様子で頷くユーリに、コーダは苛立った様子ながらも、その中に任務の達成感のようなものを滲ませながらため息をつこうとすれば、それをユーリは遮るように言う。
「……条件? なんだ、それは?」
「俺の出す条件は一つだ。しかも簡単なもの。それは──」
♪
「──……まさか、その条件とやらが、自分が勇者とは隠すことだとは、ね」
「条件呑んでから、文句を言うのは無しだぞ?」
冷静になって喧嘩を止め、一ヶ月前に提示された条件のことを思い出し、重々しく呟くコーダに、ユーリは先に釘を刺すように言った。
「言わねぇよ、それでいいって言ったんだから……お前は勇者じゃなく、勇者のお供である賢者っていうことにしておく」
本当は不満を口にしようと思っていたが、先に釘を刺すように言われてしまったため、言葉に詰まったように小さく呻けば、それを誤魔化すようにそう言った。そのコーダの言葉に、ユーリは首を傾げる。
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