プロローグ

2/2
前へ
/170ページ
次へ
 この世に存在する全てのモノには、何かしら存在理由がある。理由があるからこそ存在しているのだから、当たり前なんじゃないかと言うヤツだっているだろう。  世の中なんていうのは、都合よくできている。理由のあるモノは存在し続けられる、ありがたいルールだ。  例えば治癒の魔法はあるが、それは生命力のあるモノでなければ通用しない。壊れた建物は、治癒の魔法では直せない。  こんな「ルール」があるからこそ、建築家などという職に就いている者が存在していられる。これは一つの例えだが、他にもこの例えに当てはめることができるものがある。  この世の中にあるものは、存在を保つ力が残っている間だけ、そんな「ルール」に必ず守られている。でも、その「ルール」に守られているモノの中にだって、例外がある。  それは、「勇者」という職業だ。魔王を倒すためだけに存在し、魔王を倒せば存在理由を失う。悪事を働く限り、魔王の存在理由が保てるというのに、不公平な話だ。  別に悪いことだとは言わない。しかし、そんな使い捨ての駒のような扱いを許していいのだろうか。  存在理由を果たした勇者はどうすればいいのか。それは、俺にも分からない──。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

290人が本棚に入れています
本棚に追加