290人が本棚に入れています
本棚に追加
「んんっ……まあ、この怒りは後でまたぶつけるとして。こうなっては仕方ないから、とりあえず本題に入るとしよう」
あくまでもユーリが悪いという認識で話を進めていく少女に、ユーリは既に疲弊しきっていた。畑仕事より疲れるとはこれ如何にと思うも、答える者はいない。
「単刀直入に言わせてもらう、君は魔王を倒す勇者だ。魔王を倒すために、君の力が必要なんだ。共に旅に出よう」
少女は目尻を少し吊り上げ、至って真面目にそう言った。しかし、言われたユーリは茫然とした表情を浮かべている。まあ、無理もない話だと思うが。
「……腕のいい医者紹介するか? それとも、数年後に恥ずかしい黒歴史で苦しまないように殺してあげようか?」
「勇者がひどいこと言うもんだ。前者もだが、後者は予想外ですごくひどい」
物凄く哀れんだ目で見てくるユーリに、少女はそんなユーリに近いような、げんなりとした表情を浮かべていた。
「いや、だってなぁ……」
どう考えても、いきなりそんなこと言われたら、こんな反応をとってしまうものだろうと、ユーリは同意を求めるように訊ねた。少女の方も、それは否定できないと思っているらしく、不満そうながらも反論できずにいた。
最初のコメントを投稿しよう!