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ドシャッ、と音を立ててアルカとマコトの目の前にズタズタのボロ雑巾の様になって、尚も死ぬことの出来ない天使の成れの果て――魔族が投げ捨てられた。
「【……一体どういうつもりですか?】」
アルカは声を掛けてきた第三者である魔王に、静かにだけれども怒りを滲ませた声音で問いかける。
「どうもこうも、アルカに逢いに行くのに邪魔をするから我自らの手で懲らしめただけのことだ」
「【貴方の掛けた呪いで、貴方の攻撃では死ぬことの出来ない彼らを痛めつけるだなんて…】」
「呪いではない。これは神術だよ。アルカ」
「【禁忌の神術なんて呪いでしかない。貴方に奪われた私の天使達を返してもらいます】」
「何?」
「【降り注げ、神の癒しの雫。“慈雨”】」
アルカが降らせた雨は周囲一帯に降り注ぎ、自身やマコト、魔王さえも濡らしていく。
だが、その雨によって効果が表れたのは魔族に対してのみだった。
雨に濡れた魔族は、その濡れた箇所からサラサラとその身が崩れていき、最後には何も残らなかった。
でも、最後に消える瞬間、アルカには何かが聞こえるのか、一瞬酷く悲し気な表情になる。
「あんな奴らに神法なぞ使ってやる必要などないのにな」
「【お黙りなさい。彼らは元はと言えば私の天使。私が救えるなら救うのが道理です】」
そう言うとアルカはキッと魔王を険しい顔をして睨みつける。だが、魔王はそんな睨みつけに怯むどころか涼しい顔をしていた。
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