613人が本棚に入れています
本棚に追加
「皇帝の居城へは直接転移出来ないんじゃなかったかしら?」
・・
「今は出来ます」
「今は?」
「……実際に昨日出来ましたし、その翌日で結界が強化されているとは思えませんから」
思わずハルおば様の名前を出して聞こうとしてしまった。
それで母さんと兄さんからハルおば様って誰と聞かれてしまっては私自身がショックで何も出来なくなってしまいそうだから、別の事を言って誤魔化す。
「論より証拠です。行きますよ」
有無を言わせず、無理矢理近くに寄らせて“転送”と唱える。
次の瞬間には話し合う場として用意された会議室の中にいた。
実際に出来た事で母さんも兄さんも呆けたようにその場で棒立ちになる。
「『氷雪』、ここに直接来るだなんてどうした?」
「…来れたから来ただけ」
先に来ていたミーテッシャさんがこちらに気づいて話しかけてくる。
「荒れてるな」
「……」
色々と口をついて出そうだったけれども、言葉にはならず、私は唇を噛みしめるだけだった。
「もう始まる時間ね」
呆けた状態から戻ったのか、母さんが周りを見渡して言ってくる。
この場にいるのは師匠を抜かしたZランカーとギルドマスター、そして皇帝だけだった。
どうやら貴族連中は時間に間に合わなかったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!