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「それでは…」
そう言って私は『東端の館』に背を向けて、『闇夜の月光』の自室に戻ろうとした。
「待って。ボクも着いて行くよ」
てっきり『刀神』のようにギルドに入って行くのだと思っていたマコトさんから待ったがかかる。
「こちらで二日後の準備をしなくてもいいのですか?」
魔法が使えるのなら“転移”ですぐだが、魔法の使えないマコトさんではここイーストエッジから、首都のエルカーズまではそこそこ時間が掛かってしまう。
だから、そう尋ねたのだけれども…
「今の君を一人にはしておけないし、ボクの準備はこいつの手入れだけだから向こうにいても問題ないよ」
マコトさんはこいつと言いながら帯刀している刀をポンポンと叩いて、こちらを心配そうな顔で見てくる。
「そうですか、分かりました。ひとまず『闇夜の月光』の私の自室に行きます」
「うん」
マコトさんの返事を聞き、自室へと移動する。
自室に着いたから『氷雪』を脱いでしまう。
「ルーシア、無理はしなくていいんだよ。立て続けに君は特別親しい人を二人も失っているんだから」
「無理はしていません。それに魔王と戦うのは私であって私ではないのですから」
「それってどういう…?」
私の言葉にマコトさんの顔色が悪くなる。
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