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「またかよ――」
俺は物陰に隠れながら、目の前で起こっている非現実的な状況にため息を吐き出す。
住宅街のど真ん中で、ファンタジーアニメの定番。
剣を振れば炎が飛び出す、そんな摩訶不思議な剣を振り回している、黒いポニーテールでセーラー服を着ている女の子。
それに敵対しているのは超巨大な黒い蜘蛛。
大きさは住宅1つ分、本当にでかいなこいつ。
そいつは8本の足を上手に使い少女の剣の攻撃をかわし、さらには攻撃までしている。
「こんな状況に陥ること早5年、この異常な空間での、異常な冷静さをなめるなよ!」
俺は誰に呟くわけでもなく、そっと物陰に隠れながら、移動し続ける。
俺とさっきっから、ドンパチしている奴らを除けば、それ以外の奴は居ない。
住宅街なのに何故居ないと聞かれたら、おそらく同じ地形の別世界だからじゃね?としか俺は言えない。
そして、少女を助けなくても良いのかと普通の奴なら思うかもしれないが、この世界の強弱関係のルール上俺の出る幕は無い。
この摩訶不思議な世界の強弱関係は、どんな神様の悪戯か――
いや、おそらくあの12歳の時に出会い、それ以来よく遊ぶ人の良さそうな、そして優しそうな爺さんの悪戯だな。
話が逸れたが、この世界の強弱関係は大富豪のトランプのカード。
よく目を凝らすと、ドンパチやってる奴らの頭の上には見慣れたトランプのカードが浮かんでいる。
黒髪のポニーテール少女の頭の上には、ダイヤのクイーンが、それに対して巨大蜘蛛はスペードの9。
どう考えても、ポニーテール少女の圧勝だな。
ちなみに俺はスペードの3ですが、何か?
いや、全く最弱も困ったもんだよ。
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